カテゴリー: FX

USD/JPY・XAU/USD(ゴールド)を対象とした為替分析。チャートパターンやテクニカルの節目をもとに、値動きの傾向を記録します。

  • ゴールド1時間足『トレンドラインブレイク』を20年検証——PF1.33、ただし15分足では機能しない

    ゴールド(XAUUSD)の1時間足で「トレンドラインのブレイク」を機械的に売買したら、20年間でどうなったか——本記事はその検証記録です。結論から言うと、この戦略は当ラボの事前基準(プロフィットファクター1.15超・複数年代でプラス・パラメータ感度の安定)を通過しました。同時に、同じロジックが15分足では機能しなかったことも、そのまま公開します。

    結論サマリー

    検証期間2006年6月〜2026年6月(20年)
    対象・時間軸OANDA XAUUSD・1時間足(両方向)
    トレード数1,240回(年間約62回)
    プロフィットファクター1.33(勝率45.3%・ペイオフレシオ1.60)
    累積リターン(複利)約+570%(同期間の金バイ&ホールド:約+559%)
    最大ドローダウン−33.4%(バイ&ホールドは約−45%)
    年間成績21年中18年プラス(最悪年 −18.5%)

    リターンの倍率だけ見るとバイ&ホールドと大差ありません。この戦略の価値は「道中の質」にあります。バイ&ホールドが2011年の高値から約5年間、最大−45%の水面下に沈んだのに対し、この戦略の最大ドローダウンは−33%、スタート地点を割り込んだ最大幅は−1.4%でした。また、両建て可能なロジックなので、金が長期下落局面に入った場合の備えにもなります。

    戦略のルール(再現可能な形で全公開)

    • 線の引き方:左右10本で確定したピボット高値(安値)を、直近2点で結んで下降(上昇)トレンドラインとする
    • エントリー:終値がライン±0.5×ATR(14)を超えて確定したらブレイクと判定。上抜けでロング、下抜けでショート(ドテン)
    • エグジット:6×ATRのトレーリングストップ+固定損切り$50
    • 線の管理:寿命120本で失効。勾配が1本あたり0.5×ATRを超える急角度の線は除外。現値から4×ATR以上離れた線は破棄

    ポイントは、距離の基準をすべてATR(直近14本の平均値幅)の倍数にしていることです。金の価格は検証期間中に約6倍になっていますが、ATR基準なら「そのときの値動きの歩幅」で自動的にスケールするため、20年間同じルールで通せます。

    月次リターン(20年×12ヶ月)

    • プラスの月は240ヶ月中136ヶ月(57%)。月単位ではほぼコイントスで、年単位で勝つタイプの戦略です
    • 最も稼いだのは危機の年:2008年+64.6%、2009年+56.4%、2020年+17.9%。ボラティリティが出る年に強いトレンドフォローの典型です
    • 弱いのは金の停滞期:2010年−18.5%が最悪の年。2013〜2019年は年率0%前後が続きます。この「退屈な期間」に耐えられるかが、実運用の本当のハードルです
    • 最高の月(+25.9%)と最悪の月(−11.9%)は、どちらも2008年の連続した2ヶ月でした。同じ嵐の表と裏です

    過剰適合チェック:パラメータ感度

    バックテストで最も怖いのは「たまたまその設定だけ良かった」という過剰適合です。当ラボでは、主要パラメータを動かして結果の形が崩れないか(台地か、崖か)を必ず確認します。

    構成PF最大DDプラス年
    基準(ピボット10/トレイル6/SL$50)1.325−33.4%18/21
    ピボット15に変更1.389−27.9%16/21
    トレイル4に変更1.337−33.8%17/21
    固定損切りなし1.358−36.1%16/21

    4構成すべてがPF1.32〜1.39の狭い帯に収まりました。パラメータをどちらに動かしても景色が変わらない「台地」です。特に重要なのは固定損切りなしでも成立している点で、前半10年(2006〜2015)PF1.21/後半10年(2016〜2026)PF1.46と両時代でプラスでした。エッジの本体は損切り設定ではなく、ラインブレイクそのものにあると判断しています。

    失敗した検証も載せます:15分足では機能しない

    同じロジックを15分足で20年検証した結果は、PF1.08・最大DD−40%でした。スプレッド等の実コストを差し引くとほぼゼロです。1時間足との違いは、1回あたりの値幅に対する取引コストの比率と、ノイズに対するシグナルの太さにあります。「どの時間軸なら戦略が呼吸できるか」は市場ごとに異なる——これが今回の検証の最も重要な教訓かもしれません。

    検証の方法と限界

    • TradingView(OANDA: XAUUSD)の1時間足、2006年6月〜2026年6月。通常モードとディープバックテスティングの結果が、重複期間で一致することを確認済み
    • スリッページを織り込んだ設定で検証。1トレードあたりの平均利益は約+$3.2(1オンスあたり)で、想定実コスト(往復$0.4程度)を差し引いても期待値は残る計算ですが、実際の約定品質は口座・時間帯により異なります
    • 固定損切り$50は、金価格が低かった2006年頃には実質的にほぼ発動しない水準でした(当時の価格の約8%、現在は約1.2%)。この非対称性は固定額ストップの構造的な限界です
    • バックテストはあくまで過去のシミュレーションです。今後はリアルタイムのシグナルを記録し、バックテストとの整合(勝率・平均値幅)を本サイトで追跡公開する予定です

    ※本記事は検証記録の公開を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載の数値は過去のシミュレーション結果であり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。